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退職した4人の銀行員による4つの真実

褒められもせず苦にもされず

人生は仕事と愛でできている。

まだまだ途中なので悪しからず

 

あと、文量もこだわりはない。

ただ書きたいことをとりあえず書いてるだけです。

誤字脱字、構成等、不十分な点多々あるかと思います。

 

 

 

11月7日(退職まで残り 営業日)

午前中の往訪を終え、いつものごとくコンビニでサボろうと営業車を運転していた時にふと思った、『あ、仕事辞めないと汗』

                         

その日の朝、めちゃくちゃ強面な次長が私を隣に座らせ、

その顔や普段の態度からは到底想像できないほど懇切丁寧に、

私の担当先一覧を広げ、この会社はこうしよう、あの会社はこうしよう、

そう指導してくれた。

申し訳なさ、それが決定打となった。

 

自分一人で担当先を持って一ヶ月。

自分でもびっくりするぐらい、やる気がまるで湧いてこない。

『これ以上、自分の人生を浪費するのはやめよう』本気でそう思った。

 

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全く好きでない会社の看板を掲げ、意気揚々と私はどこどこの誰々ですと自己紹介し、

なんかよくわからない金融商品を売り込む。これでもかというほどに売り込む。何が楽しくて売り込んでいるのかもう誰も考えない。ただただ売り込む。自己紹介しては売り込み、売り込んでからは自己紹介。後何年この会社で働いても、会社名と自分の名前が綺麗に並べられた名刺を、誇りを持って相手に渡せる日が来ることはなかったと思う。

あ、クラブで女の子をナンパするときには自信持って渡したっけな。

 

二年目の11月。はじめは楽しみだった。同期よりも仕事ができていたし、上司からも好かれていた。そんな環境にいたからこそだが、何より自信に満ち溢れていた。

窓口業務を終え、稟議書の書き方をマスターし、10月からやっと担当先を持った。独り立ちしようという時だ。

業務が少しずつ変わっていくたびに、少なからず希望があった。

その希望だけを頼りに二年弱働いた。

その希望はいつの間にか、営業車の中で、突然ふわっと消えてしまうほど薄っぺらいものに変わっていた。

約二年、長いか短いか、それは諸説あると思う。

けれど、この先何十年も働きたい会社なのかどうか、それだけを判断するには十分すぎた。

 

ちょっとここで自己紹介。

まずは銀行に入った理由を述べる。

そんな大したものではない。単純明白、『一番出世できそう』ただそれだけ。

恋愛や言葉遊び、ちょっとした駆け引きは好きなタイプだし、帰属意識もある程度高い、俯瞰力もあるし人に気に入られやすい、数字には強いしロジカルシンキングも好きだ。あとは学歴との折り合いだけだった。

しかしながら、就職活動には苦労した。いかんせん、本気で入りたいと思う会社などなかったからだ。偽りの姿で臨んでも、簡単に入れる会社などそうない。まさに朝井リョウさんの「何者」だ。これまたしかし、当時は本気でエリートサラリーマンになりたいと思っていたから、本当に苦労した。その分、第一志望であったこの会社に内定をもらっときはかなり嬉しかった。

 

入社してからは楽勝だった。

嫌な奴と思われるかもしれないが、本当に、同期と会うたびに自分の有能さを実感できた、居心地が良かった。日々の業務でも苦労することはなかった。

実際、私は順調に出世コースを歩んでいた。職歴は短いが同期の中では比較的いい配属だったし、(これは後から聞いた話なのだが)次の転勤先も希望していた海外だった。

 

つまるところ、このまま退職せずに続けていれば、学生の頃に目指していたエリートサラリーマンになることができた。

 

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昼すぎに部店に戻った。

辞めることはさっき車の中で決めた。一度決めてしまえば、行動あるのみ。

デスクに座り、次長に話しかけるタイミングをこれほどかというほどに見計らう。私の得意技だ。

次長が席を立った、食堂へ向かう、、、今だ。

配食カウンターに次長を確認、そのままそこを通り過ぎ、奥にある喫煙所へ。

一服し、心を落ち着ける。

セブンスターを一本根元ギリギリまで吸ってから喫煙所を出た。

そのまま次長が座っている方へ忍び寄る。

座っている次長よりもさらに態勢を低くし、その動きで次長が私に気づいた瞬間囁いた。

「すみません、あとでどうしても言わなければならないことがあります」

「少しお時間頂いてもよろしいですか」

明らかに動揺している次長を横目にデスクへと足早に戻った。

  

しばらくして、食堂から戻ってきた次長に呼ばれ、二人で会議室に入った。

 

 「やめてフェアトレードがしたいです、あ、あと、会社も作ります」

 午前中、営業車に乗るまでこんな展開は予想だにしていなかったので、自分でも引くほどに何を言っているのかわからなかった。

が、それにも増して、次長があたふたしていたのをはっきりと覚えている。私の無茶苦茶なロジックはすんなりと受け入れられた。

 

15分ほどして会議室を出ようとした時、衝撃の一言を告げられる。

「じゃあ、部長に言う時また教えてくれ、なんか協力できることあったら何でも言ってな」 

 

「ありがとうございます」と反射的に返したが、

そんな言葉とは裏腹に、

 『やられた。』心の中でそう呟いた。

 

てっきり、直属の上司にさえ伝えれば、あとは自動的に部長、人事部へと伝わるものであると勘違いしていた。

次長への退職宣言は何の意味もないものであったのだ。

というか、協力できることあったらて、、、、、いますぐお前から伝えろや!!!

 

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さてさて、ここからいろんなミッションが生じてくる。

 

まずは、部長に伝えるタイミングと内容を考えなければならない。

そう、辞める理由だ。もちろん、それなしに次長への退職宣言を行ったわけではない。

辞める理由などクソほどある。

けど、どう伝えても、辞める=現職の否定となってしまう。

 

辞める理由はネガティブとポジティブが半々といった具合だ。

 

それをポジティブ100%に盛らなければならない。

というのも、50歳の上司を前に、二年目の私が現職を否定したところで、説得力は皆無だからだ。

相手の立場になって考えればよくわかる。自分が長年続けてきた仕事を若造に否定される。

その若造がどんだけまともなことを言っていたとしても、決して受け入れることはできない。日本経済を担ってきた大企業の一員として、30年間築き上げたもの全てがペーペーに否定されることなど、あってはならないのだ。

銀行で出世している一昔前の世代の人たちは、未だに日本は世界的経済大国で、それを引っ張っているのは自分たちだと勘違いしている。

確かにそうゆう時代もあったのだと思う。

 

ただこれだけは気づいて欲しい。時代は変わっているのだ。

 

少し脱線したが、兎にも角にも、部長にどう斬りこむか考えなければならない。

ネガティブを一切捨象し、ポジティブオンリーでどう戦うのかを考えなければならない。

 

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布団に入り、今日、営業車の中で退職を決めた時の感覚を思い出してみる。

すると突然アドレナリンが出てきた。

その時ばかりは理由なんてどうでも良かった。

儚く散ったあの希望は、私を唯一会社にとどめていた理由だった。

もう一切の未練がないことを改めて感じ、興奮していた。

 

『これでやっとパーマがあてれる』

 

翌朝、いつもよりちょっとだけ早く起きた。

 

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先ほどから連発している 希望 の正体について述べておく。

 

一言でいうと、仕事が好きになる期待値 といったところだろう。

 

入社時、例えばその期待値が100であったとしよう。

一年目の窓口業務、同期との会話、上司の考え方、

様々な要因でその数値は減少していった。

逆に増えることもあった。先ほども述べたように、業務が変わるごとに50まで落ちていたものが100に戻ったり、上司に認められることで時には120まで上昇していたかもしれない。

 

期待値の求め方はみんな高校で学んだはずだ。

 

ここでは以下のように求められるだろう。

 

仕事に対する希望 =(未来1の楽しさ)×(未来1になる確率)+(未来2の楽しさ)×(未来2になる確率)+ …

 

希望が突然消えた時、それは期待値が0であることに、感覚的に気づいた瞬間だった。

 

そう、未来xの楽しさをf(x)とすると、

それはまさにf(x)=0 (−∞≦x≦∞)

 

あることに気づいた瞬間だった。

 

どんな未来が訪れても、楽しい未来は待っていない。

ならば前提条件である、この会社に勤めること、を変えるしかない。

 

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11月11日(退職まで残り 営業日)

 

『あ、今日はポッキーの日か』

 

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ポッキーの日と言えば1年前を思い出す。

 

銀行員1年目、私は窓口業務を行っていた。簡単に言うと研修のようなものだ。

口座開設や振り込みなど、支店に来る個人のお客さんの対応をしていた。

思い出してみてほしい、銀行スタッフは女性ばかりだ。

そう、そこには必ず小さな女社会が存在する。

私の場合、支店部長と私を除き、支店課長以下全員、女性職員であった。

「女社会」と言う単語がどうゆう状態を形容しているのかは人それぞれであるだろうが、

私の場合は、「感情のままに動く人たち」といったとこだろう。

 

結論から言うと、とにかく辛かった。

いかんせん、会話ができなかった。どんなにまともなことを言っても、女社会の中では無力。完全感情主義だ。女課長の機嫌を損ね、全職員の前で、女課長に完膚なきまでにフルボッコされることが多々あった。それ自体は個人的に面白かったのだが。

課長に限らず、先輩が全員女性であったので、いちいち気を使った。一度不機嫌になってしまうと取り返しがつかない。年上の女性に気に入られそうな可愛い後輩を演じた。まあ、それが功を奏して、お局さんにもよく気に入られていたのだが。

まともに会話できるのは同期の馬場ちゃん(仮名)だけ、マイペースなAB型の可愛らしい女の子だった。

馬場ちゃんも私同様、よく課長を怒らしていたが、振り返ると私よりも気にしていなかったように思える。

誤解を与えると良くないので、先に弁解しておくが、何も女性を否定しているわけではない。ただ働くことにおいて、感情ベースをここまで全面に出されると(たまたま私の職場がそうだっただけだと思う)、私としてはやりずらかったというだけだ。

 

さて、読者の中には、この後、馬場ちゃんとの恋愛話が私の退職体験記に華を添えるのではないかと期待する人がいるかもしれない。

先に言っておくが、そんな鮮やかな華は、この体験記にはない。

 

 

あ、なぜポッキーの日に1年前のことを思い出したかなのだが、

女課長の一声で、業後にポッキーパーティが行われた。

みんながポッキーを持ち寄り、ただポッキーを食べるだけなのだが、

それが嫌すぎて、早く帰りたすぎて、机の上にあるポッキーを手当たり次第食べまくったことを、なぜか支店時代の一番の思い出と言ってもいいほどに、鮮明に覚えているからだ。

 

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その日がポッキーの日であることを意識したのは、通勤電車の中の一瞬だけだった。

 

職場の最寄駅で駅を降り、職場まで10分ほど歩く。

『やっぱり今日だな』心の中でそう決めていた。

というのも、明日は土曜日。

せっかくの土曜日を、むしゃくしゃした気持ちで迎えるのは非常に勿体無い。

 

デスクにつき、部長のスケジュールを確認。

自分の外訪と照らし合わせ、どのタイミングで話しかけるか考える。そう、私の得意技。

 

次長の時と同様、先制パンチは食堂でだった。

パンチの威力、精度、すべて一緒だった。

前回同様、やはりこれがベストだった。

「すみません、あとでどうしても言わなければならないことがあります」

「少しお時間頂いてもよろしいですか」

 

部長の目が泳いでいた。「わかった」

 

デスクに戻る。

次長の時よりもやはり少し緊張が強かった。

部長は根っからの頑固親父、自分の考えが100%正しいと思っており、部下からの信頼はゼロ。メガバンクで働くことが、まるでこの世の中で一番偉いかのように、銀行員と言う職に誇りを持っていた。

次長の時のように簡単には終わらないだろうと容易に想像できた。

 

『どんなに前向きな理由を述べたとしても、あの部長が許してくれるだろうか』

 

そんな不安に加えて、とうとう何を話すか明確には決めていなかった。

その場の流れにうまく対応する。これまた私の得意技だ。

何度か考えようともしたが、辞めることを決めているにもかかわらず、辞める理由を考えるのもなんだかバカらしい。

 

『絶対辞める』という強い意志、ネガティブな理由は言わないという礼儀、そして、会社を作るということは言わない、この3つだけを武器に臨んだ。

 

※3つ目はどうゆうことかというと、この時点では、会社を作ることは決まっていたが、その会社が一体なんなのか、当の本人にも全くわかってなかったからである。

 

部長がデスクに戻ってきた。

お呼びはかからない。きっと対策を練っているのだろう。

そのまま私は次長と外訪に出た。

 

帰りの車のなか、「で、部長にはいつ言うんや?」と次長。

「あ、今日言います。さっきアポとりました」何ともポップに返す私。

少し驚く次長。『こいつほんまに言うんか』笑いながらも、そんな表情だった。

 

「本当は来週末11/18.19の部店旅行が終わってからにしようと思ってたんですけど、部長に話さないと話が全く進まないな、と思いまして」この時ばかりは少し嫌みっぽく言ってしまった。

私がわざわざ部長のアポを取ってまで告白しないといけないのは、紛れもなく次長のせいだ。

 

店に戻ったのは、まだ外が明るい時間帯だった。

デスクについて30分ほどした頃だろうか、

部長に呼ばれ、部長室へ入った。気合十分。

 

部長の目の前に座る。

途端にHPが半分くらいに削られた。

 

部長「で、どうしたんや」

私「あの、実は会社を辞めさせていただきたいと思いまして」

部長「なんでや」

私「どうしてもフェアトレードがしたいんです」

部長「会社も決まってるんか?なんて会社や?」

私「はい、〜です」『嘘だ』

部長「どんな会社やねん?」

私「ほにゃららほにゃらら」

部長「意味がわからん」

私「?」

部長「そんなん銀行でできるやろ。—部にいけば~できるし、ー部にいけば~ができる。そんな小さい会社入らんと、ここでキャリア積んだ方が絶対いいやんけ。だいたいその会社年商なんぼやねん」

私「1億ぐらいだと思います」『知らんわハゲ』

部長「全然大したことないやんけ。総合商社いきたいとかならまだわかる、そんな会社いつ潰れるかわからんぞ」

 

ここら辺で私の口はすでにカラカラ、もちろんHPは0。

きっとこの人には何を言っても聞いてもらえない、そう思った。

 

部長「ほんまにわからんわ、メガバンクでできなくて、その会社でできることってなんやねん」

私「、、、こんなこと言ったらアホかと思われると思うんですけど」

最後のあがきだ。部長を怒らせないよう、少しあやふやな言葉で伝える。

私「本気で世界を変えたいと思うんですよね。広義な意味で。今の企業って、収益体質になってしまって部分がどうしてもあると思うんですよ。ほんとは、企業が社会的に何かバリューを生んで、その活動を続けていくために、サスティナビリティを保つために収益を得る。そうゆう本当の意味で、バリューを生んで世界を変えるような、そんな仕事がしたいです。」

 

『やっと少し本心を言えた』そう思うと同時に、『ミスった』、そう思った。案の定、、、

 

部長「当部が収益しか考えてへんいうんか」

私「いや、そうじゃないんすけど」ヤバイと思って食い気味に言った。

私「当部では本当によくしていただいてますし、不満など一切ありません、部長にもほんと感謝してます…」

部長「正直、お前には期待してたから裏切られた気分や、自分の息子なら殴ってる」

 

そこからは部長に何を言われたかはあまり覚えていない。かなり興奮した様子で、30分ほどは怒鳴られていた。

私は戦うことをやめ、辞めるという意思だけは曲げずに、ただ時間が過ぎるのだけを待った。

 

部長「とりあえず一週間考えて、もっかい話そ」

 

その言葉を最後に、長い長い第一戦が幕を閉じた。

 

退職までの道のりが、やけに遠く感じられた。

 

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11月18日(退職まで残り 営業日)

 

部長に告白してからちょうど一週間。

その日は先輩と車で通勤していた。

そう、今日は業後にそのまま部店旅行に行くのだ。

 

最初はこの部店旅行が終わってから部長に告げるつもりであった。

というのも、旅行の一部である翌日土曜日のゴルフコンペで部長と同じ組だったからだ。

 

『今日の面談次第では、もしかしたらゴルフを楽しむこともできるのかな』

そんな淡い期待を寄せていた。

 

定時に退社する。

それを目標に部内は朝からバタバタだ。

 

そんな先輩たちを横目に、ただひたすら、面談のことだけを考えていた。

『今日で決まってくれればいいのだが』

 

先週部長に退職を告げてから、副部長、次長1、次長2と3回は1対1で飲みに行った。

部長から指令が下ったのだろう。

みんな言うことは一緒だった。

「別にお前の人生だから好きにすればいいと思うが、もう少しいてもいいのではないか」

2時間の飲みの席をまとめたらそんな感じだ。

全く心は動かなかった。

別に上席のことが嫌いなわけではない。むしろ好きだ。

ただどうしても、自分の望まない人生を歩んできた大人たちの言葉には、説得力がなかった。

 

午後2時。

雲行きが怪しくなってきた。

ここから定時まで、どう考えても私のスケジュールと部長のスケジュールがマッチすることはない。

『最悪の状態でゴルフ回らなあかんやん。』

 

午後5時。

みんなで車に乗り込み、旅館へ向かう。

もちろん面談は行われなかった。『やっぱりか』

 

風呂に入り、宴会が始まる。

居心地がものすごく悪い。早く終わって欲しかった。

 

0時ごろだろうか、上席陣がやっと就寝。若手だけが残る。

ここでやっと緊張が切れたのだろう、なぜか私はベロベロだった。

 

先輩相手にスリッパで卓球に挑み、

みんなでコンビニに行った後、道路に向かって立ちションしていたらしい。

綺麗に証拠写真まである、が、

全くもって覚えていない。

 

翌日のゴルフのスコアがボロボロだったことは言うまでもないだろう。

メンタル、フィジカル、共にズタズタだった。

 

結果はブービー賞で次回幹事、辞めたいと行っているにもかかわらずその抱負をみんなの前で発表させられるという最悪のオチつきだった。

 

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11月21日(退職まで残り 営業日)

 

今日は研修だ。

部店には行かず、同期のみで本部に集まる。

 

なんども来ている研修室に足を入れる。

 

研修が始まった。

講師「今日、忘れ物をした人は?電卓も持って来たか?」

 

電卓がいるなんて聞いていない。そもそも案内を読んでいない。

私を含め数人が手を挙げた。

講師「後で取りに来るように」

 

言われた通り、意気揚々と一番に取りに行った。講師は鬼の形相だった。

講師「君、事前課題出してないよね」

私「はい」

講師「なんで?」

私「なんで?」

理由などない。

一度出したが、やってない部分があると内線がかかって来た。時間がかかるにも関わらず、あまりにしょうもない内容だったのでそのまま無視しただけだ。

講師「ふざけてるの?」

私「いえ、そうゆうわけでは。時間がありませんでした。」

講師「だったら連絡するのが礼儀でしょ、君、お客さんにもそんな態度とってんじゃないの?」

これにはカチンと来た。仕事を辞めようとしてからも、手を抜いて仕事をしたことはない。

朝、低血圧であることも重なって、思わず睨みつけてしまった。

講師「次から気をつけるように」

 

今すぐにでも辞めたいのに、退職の話が全く進まず、精神的に不安定だった。

 

研修中は携帯でひたすらキングダムを読んでいた。

たまたま同じグループに居合わせた同期があまりに不出来だったので、グループワークだけは少し参加してあげた。

 

『早く辞めないと』

同期を見て、その思いが一層強くなった。

同期が仕事の話で盛り上がっているのを見るととてつもなくイライラした。

うちの部はこんなに大変だとか、こんだけ稼いでるとか、めちゃくちゃ嫌味な先輩がいるとか、、、なぜかとてつもなくつまらない。

 

精神が不安定になるにつれ、仕事を飛ぶ と言う発想が生まれて来た。

 

定時。

研修が終わると、基本的には各々の上司に終了の報告をしなければならない。

暗黙のルールのようなものだ。

 

大半の人はそのまま部店に戻り、仕事をする。

私も今まではそうだったのだが、戻っても特に仕事がないし、なんとも電話ですら次長と会話をしたくない。

 

研修所を出てそのまま近くのアパレルショップへ。

大学の頃のバイト先だ。当時の同僚がまだ働いていた。見た目はただのヤンキー、中身はただの地元大好きヤンキー。けれど仕事はよくできた。一緒に働いていて、要領がいいというか、阿吽の呼吸というのか、とても楽しかった。

歳は一つ下なのだが会話はタメ語、けれど名前だけは君付けで呼んでくる。

私が社会人になってからもよく飲みに行った。

 

なんとなく報告したかったのだろう。

出会い頭、二言目ぐらいで、「あ、俺仕事辞めるわ」そう言った。

 

ヤンキーは笑っていた。

それを求めていた。とてつもなく心地よかった。

報告したかったのではなく、ただただこいつを笑わすために来たのだと気付く。

 

そのままヤンキーの仕事が終わるのを待ち、飲みに行くことに。

 

ヤンキー「てかなんで辞めるん!笑」

私「クソつまらんから笑」

ヤンキー「いや、そんなん俺もおもんないから!笑」

私「いやでもお前、仕事の話してる時楽しそうやで。」

ヤンキー「それはない!」

私「まじまじ」

ヤンキー「逆の立場やったら死んでも銀行にすがりつくけどな、別に楽しくなくていい」

私「そう!それ!そーゆうことなんよ!」

ヤンキー「何が?笑」

私「俺は人生楽しみたいだけ♪」

ヤンキー「いや絶対後悔するって!俺はスーツ着てサラリーマンなんかしてみたいよ。朝仕事行く時電車乗ってて、自分だけ私服なんやで。大学生みたいでめっちゃ恥ずいから!」

ヤンキーにはヤンキーなりの仕事に対する苦労がある。

私「でも髪の毛伸ばせへんねんで!」

ヤンキー「うわ、それはきつい」

私「やろ!」

とりあえず私が論破した。

私「そんでさ、めんどくさいことすっ飛ばして明日にでも辞めれる、なんか面白い理由ないかな?」

ヤンキー「そんなん一個しかない!ピンサロ行って本番やって捕まったらいい」

私「ありやけど無しやわ。ピンサロで本番すんのはいいけど、お前みたいに前科は欲しくない」

ヤンキー「せやな、前科はないほうがいい笑」

ヤンキーとの会話はいつもこんな感じだ。

 

私「明日飛んだろかなー」

ヤンキー「本気でゆーてる?」

私「半分ぐらい」

ヤンキー「一旦いこ、あと一年」

私「長いわあほ」

ヤンキー「せめて三ヶ月」

私「長すぎ。決めた、明日とりあえず行かへん」

ヤンキー「ほんまにあかんて!!!笑」

このやりとりをお互い懲りずに5回ほど続けた。

 

私「てかさ、なんでそんな止めてくんの?」

ヤンキー「うーん、なんでやろな。めっちゃ辞めたがってるから」

私「意味のないデモかよ」

ヤンキー「いや、効果抜群でしょ?」

私「ノーダメージじゃ笑」

 

そこからヤンキーの近況について話した。

ヤンキーの奥さんのこと、最近飲酒運転で捕まったこと、仕事をサボっている後輩を血まみれにしたこと。

こいつの人生はいつも話題が尽きない。

 

気づけば日付が変わろうとしていた。

その頃には完全に、明日会社を休もうと心に決めていた。

 

寮に帰り、布団に入る。

『さて、どうやって休もうか』

 

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なぜこんなにも行きたくなかったのか、正直あまり覚えていない。

 

辞める会社で、これ以上不毛な時間を過ごすのがとてつもなく嫌だったのは確かだ。

まさに時間の浪費。

例えるならば、嫌いになった彼女とでも言えるだろう。

一度嫌いになった途端、嫌いな部分しか目に入らなくなる。別れることを決めているにもかかわらず、実際に破局するまでの無駄な時間を過ごす不毛さに、苛立ちが増長していく。

そんな感じだ。

 

『飛ぶことの何が悪い』本気でそう思っていた。

私が仮に飛んだとして、2週間もすれば職場はことなきを得るだろう。

確かに多少の迷惑はかけることになるが、職場の上司や先輩と今後会うことはほぼほぼない。

けど、不思議なもんで、嫌いになった彼女を別れるという形式なしにキパッリ無視することができないように、仕事を飛ぶことはどうしてもできなかった。

 

その葛藤の結果が、とりあえず休んでみる、だった。

 

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11月 日(退職まで残り 営業日)